2020年4月13日 実行委員会
代表 寺田 誠知
1.郷土の歴史と先祖の志
古老から「お獅子様」や「文政更木騒動」など、郷土の伝承や歴史についてお聞きしました。その中身は、一口でいえば志ということです。それは、権力者に忖度して、長いものには巻かれろという卑屈な生き方ではなく、己の自我を確立して正義を貫く強靭な信念をもつことです。しかし、人が人として生きようとする時、必然的に権力者との間に緊張が生まれます。それは人間の自由と社会の秩序との矛盾でもあります。また、破壊と創造、抑圧と解放という矛盾でもあります。その矛盾を直視したとき、哲学が誕生し、芸術に発展します。
2.芸術としての能楽
私たちの現代新作能は、人生の矛盾を止揚する格闘から誕生したものです。それは、式楽として完成するに従って、民衆から離れていった、難解で眠たくなる能ではありません。私たちは観阿弥や世阿弥の原点に立ち帰り、分かりやすくて目の覚めるような能を実演します。それは、催眠術によって民衆を洗脳して従順な奴隷にするためのものではなく、私たちが現実の矛盾と格闘して自らが歴史を作っていく生きいきとした主体的な人間に生まれ変わるためです。人が生きるとはそういうことであり、それは吉本の喜劇よりはるかに面白く、感動的なものです。
3.破滅へと向かう世界
世界は、テロや戦争、災害やウイルスによって破滅へと向かっています。2045年には、AI(コンピューター)と人間の頭脳の力関係が逆転します。そんな時代に、それぞれの国家が身勝手なアルゴリズム(プログラム)でAIを操作すれば、世界は「バベルの塔」になります。それどころか、AIが勝手に戦争を起こし、人間はロボット兵器によって殲滅されかねません。それにもかかわらず、世界の国々は新型コロナウイルスで協力するのではなく、互いに責任転嫁して非難し合っているありさまです。
4.蘇原能の目的
私たちは何のために能を上演するのか、それは私たちが人間らしい生き方を取り戻すためです。それは不正に立ち向かう勇気を持つことです。無益な戦争や環境破壊によって人類を滅亡させてはなりません。そのためには、いつまでも国家同士の争いに明け暮れるのではなく、地球を統合して世界政府を樹立し、戦争をなくして地球環境をまもり、ウイルスや自然災害を克服していかなければなりません。そのために、私たちは能を通して世界に大号令を発するのです。
敬白